金商法は仮想通貨の新たなスタートの引き金になる

本記事を執筆している2018年7月の初頭、金融庁による仮想通貨の規制に『金融証券取引法(金商法)』への適用検討がニュースになっていました。

金融証券取引法(金商法)ってなに?金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図ることを目指し、2006年6月14日に金融庁によって公布された法律のこと。

今月初めに行われた議論の場では、金融庁がこの内容を否定したために、近い将来すぐに仮想通貨が金商法の対象となることはなさそうです。
しかし、そう遠くない将来に仮想通貨は金商法の対象になる。と予想しています。

もし金商法の対象になった場合、次のような変化が起こると考えております。

  • インサイダー取引や不正な取引は規制され、より公平に取引を行えるようになる。
  • 取引所の破綻によるGOXに怯えることが無くなり、安心して資産を仮想通貨にしておくことが出来るようになるため、仮想通貨の流動性が上がる。
  • 税金は分離課税として20%になり、利益を得るために参入する投資家が増えて市場が拡大する。

今後の仮想通貨における重要な法規制となりますので、ひとつひとつ見ていきましょう。

インサイダー取引などの不正取引が減少し、公平性が増す

インサイダー取引は日本では金融商品取引法により規制されています。

インサイダー取引とは?未公開情報を不法に共有・利用して証券市場取引を行い、情報を持たない投資家に損害を与える犯罪的行為をインサイダー取引と言います。分かりやすく言うと「関係者しか知らない情報を元に、儲けたらダメだよ」ということです。

ただし、現状は仮想通貨に関して、金融商品として該当しないという政府の見解があるためにインサイダー取引の規制対象外となっているのです。
→参考:ビットコイン「通貨ではない」 初の政府見解(日経新聞)

実例として、Twitter等である取引所への上場情報を掴んでいたので大儲けしたという投稿や、取引所の社員からインサイダー(内部)情報を取得したという書き込みがあり一部で問題視されました。

相場は長期的に見た場合、時価総額が上昇すると保有者全員が得をし、下がると全員が損をしますが、時価総額の上下を気にしない短期的な売買で見た場合はゼロサムゲームに近いものになります。
みんなが知りえない情報を元に、内部者が得をすると、誰かが損をするという仕組みになるわけなのです。

それが現在は法規制の対象とならないがために、実態として少なからず起こっているんですね。
仮想通貨が金商法の適用されることにより、こういった不正取引への規制が法律上で機能させることができるため公平性が増すということです。

自分の資産を安心して仮想通貨として保有できるようになる

仮想通貨の取引所が破綻する、ということがあります。
有名なのはマウントゴックス事件と言われるものです。

マウントゴックス事件とは?当時最大の仮想通貨取引所だったマウントゴックスに対する不正操作が行われ、約480億円分のBTCと預かり金が不正操作により消失した事件のこと。
この事件から、不正操作による仮想通貨消失事件のことをGOX(ゴックス)と呼ばれるようになりました。

最近では、2018年1月26日に起きたコインチェックによる「ネム(NEM/XEM)」という通貨580億円のGOXが記憶に新しいですよね。

金商法では、取引所が破綻した場合でも投資家の資産が保護されるように管理するという法律があります。
しかし、仮想通貨は金融商品ではないため、消失した仮想通貨は手元に戻ってこないかもしれません。すべてが自己責任扱いになっているのです。

コインチェックは「ネム(NEM/XEM)」流失事件について補償しましたが、取引所が破綻してしまったらその資産は無くなってしまうものと覚悟したほうが良いでしょう。
GOXのニュースは日本に限らず世界を見ると、小さな(とはいっても数億円規模ですが)ものを含めると日常的に発生しています。そしてほとんどの場合犯人は捕まりません。

このリスクが現在の仮想通貨に対する価値にバイアスをかけているのは間違いありませんし、消失リスクを考えた場合、現在の仮想通貨の価値は逆に高すぎると考える人も多いです。

金商法の対象になることで、投資家の資産保護が強まり、より安心して保有することができるようになるわけです。

仮想通貨の税金が「分離課税」になることのメリット

現在、仮想通貨の投資によって得た利益は「雑所得」として処理され、最大で55%もの税金がかかります。
この高すぎる税金が、仮想通貨への投資を阻んでいるのは考えるまでもありません。

利益の半分以上が課税されるのなら、参入する気持ちはなくなりますよね…。

仮想通貨における3種類の税金ルールと課税額を徹底解説

 

もし、金商法の対象となった場合、仮想通貨は金融商品として正式に認可されます。
そのため税金も株式投資などと同様に「分離課税」に該当し、課税率も20%となります。

こうなると当然ながら、株式投資やFX投資を中心に行っている投資家たちの巨額な資産が流入してくることも予想されます。
その結果、仮想通貨の市場全体が活発化し、どんどん値上がることも十分に考えられるわけですね。

仮想通貨と金商法の関係は今後も注目していきましょう

改めてまとめます。

  • インサイダー取引や不正な取引は規制され、より公平に取引を行えるようになる。
  • 取引所の破綻によるGOXに怯えることが無くなり、安心して資産を仮想通貨にしておくことが出来るようになるため、仮想通貨の流動性が上がる。
  • 税金は分離課税として20%になり、利益を得るために参入する投資家が増えて市場が拡大する。

このように考えると、仮想通貨が金商法の対象となるのは時間の問題のようにも思います。
金商法の対象になることで仮想通貨の「何か」が変わるのではなく、金商法は日本の仮想通貨が新たなスタートを切る引き金となるのではないでしょうか。

そんな期待を込めて、この記事を締めくくります。

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